タイで海外転職する際に、前職の経験よりも大切なこととは?

4

みなさんこんにちは、アデコタイランドの多田です。
タイは順調に雨季らしく、スコールが見舞われることが多くなりました。お蔭様で洗車の必要がなく、きれいな車を運転できるので気持ちいいです。その反面、濡れた体でクーラーのがんがんに効いたショッピングモールや電車に乗ると、まちがいなく風邪をひくので注意しないといけません。
さて先日、「初めての海外就職ではみんな新卒!?」の記事の中で事例としてTさん(男性25歳)を紹介させていただきました。実はこの男性は、私のことです!!タイに初めて来た時の若かりし私のことです。
私は日本で働いていた時と似た仕事を今もさせていただいていますが、今になっても海外転職をしたことは人生の転換期になりえたと考えます。なぜならば、タイへの転職後、過去の経験(前職での経験)をどう活かすかということよりも、初めての経験や価値観(タイでの経験)とどのように向き合うかということが重要だと痛感したためです。

まずは私のことについて、少し説明をさせてください。大学を卒業後、3年間人材サービス会社に就職し営業をしておりました。その後、タイの人材サービス会社に営業職として転職。1年間がんばりましたが紆余曲折があり、アデコに転職をすることとなりました。今回は日本から初めてタイに移ったときの話を書きたいと思います。まずは、前職の経験で役に立ったこと、次に、活用できなかったことを順番に書いていきます。

タイへの転職後、前職の経験が役に立つ瞬間とは?

根本的な人材サービス産業のコンセプトと他社競合について理解していることは今の職場でも役に立ちました!!他には、日本でも様々なお客様のお仕事をさせていただいていたので、お客様のビジネスを知っていることも良かったです。他の業界/職種の方に当てはめますと、自分が所属していた業界の収益の方法と商材がわかるというところでしょうか。
日本でも担当をさせて頂いていた企業様を、タイでも担当させて頂いた時には、前職の今の日本の担当者のお話で盛り上がり 、楽しい時間を過ごさせて頂きました。その会社の中長期目標を理解している場合などには、その目標を前提に人材の採用方法などの確認ができます。
お客様とお話をする時の話題がありますので、気持ち的にはリラックスして取り組むことができ、役立ったと言えます。

今の職場で活用できない前職の経験は?

経験の中で活用できないことはないと考えています。新卒から3年間お世話なった会社では様々なことを学ばせていただいたので、活用できないことはないと思います。
ただ、日本での常識に捉われてしまい、柔軟に対応できなかったことはありました。

経験の有無は大きなメリット・デメリットにはならない

振り返って考えてみると、経験の有無はあまり大きなメリット・デメリットにはなりえないように思います。もちろん、あるに越したことはありませんが、大きなメリットになることもないと思います。私の場合、タイの1社目を1年で辞めてしまった理由は、経験の有無は関係ありませんでした。一番の原因は初めての環境に適応できなかったということでした。

課題は外部ではなく社内に潜む―タイ人スタッフとの感覚のズレ―

私にとって、一番の問題は社内にありました。
タイで仕事をする以上、オフィスにいるメンバーのほとんどはタイ人スタッフで、日本人はむしろ少数となります。仕事をする上でも、タイ人スタッフと連携を取りながら仕事をすることとなります。ポイントは語学の壁よりも、前提条件や感覚の違いです。
例えば、日本ではプライベートな関係と業務上での関係を割り切ることへの理解があります。日本で「お客様に契約書を送るので作ってください」とお願いすれば、すぐに作成をしてもらえると思います。そのベースには、「業務上の指示」であるという認識があります。新入社員であったとしても、先輩社員に業務上お願いをすることは普通に見られることだと思います。ただ、タイでは「業務上の指示」という認識が希薄です。業務上の指示以前にプライベートな関係が重要なので、人間関係の良し悪しが業務の遂行の可否に直結します。業務上の関係だからと言って淡白な関係をしていると、仕事が上手くいかなくなりますよ!(私のように)
続いても感覚の違いについてですが、日本ではお客様の要望は最大限尊重されるべきだと考えられているようです。定時前に、「今日中に仕上げて欲しい!」と言われれば、「よし、やろう」となるのが日本人ですが、タイ人の場合は、「今日はもう定時なので、明日やろう」となります。お客様と相対するのは日本人であることが多いので、日本人からタイ人スタッフにお願いすることになりますが、「お客様のお願い」と言うだけでは対応してもらえません。「お客様のお願い」は日本では充分な理由になりますが、タイでは「そのお願いに応えることによって、そのタイ人スタッフにどんなメリットがあるのか」を説明する必要があります。「お客様のお願い」に応えることだけで、思考を停止させてはいませんか。「お客様のお願い」だからと一方的にお願いをすると、関係は悪化するばかりです。

他にも、タイ人の仕事感は日本人のそれとは全く違います。個人差はありますが全体的にタイでは、プライベート>仕事であることが多いです。人生を豊かにするために仕事をしているという感覚がありますので、仕事のためにプライベートを削ることはタイ人にとっては本末転倒になるわけです。

このように前提条件が違う中で話し合いを進めていくので、どこかでお互いに理解し合えない部分が出てきます。何が原因ですれ違っているのかを確認していく作業は、自分ひとりではできないので 、何度も話し合いをしながら掘り起こしていくことになります。この作業には時間がかかりますし、他の業務を圧迫することになり、私の場合おざなりになりがちでした。しかし、この作業が実は非常に重要で、おざなりにしていると、タイ人スタッフとの関係性が悪くなり業務が進まなくなってしまいます。

タイの人材業界あるある―価値観のすれ違い―

せっかくですので、人材系に関することですがすれ違いの具体例を挙げていきたいと思います。

とある日、お客様がタイ人スタッフを探しているというので、お話を聞きに行きました。お話しを聞いてみると、新規立ち上げ要員でマーケティング・営業・社内のマネジメントをはじめ、様々なお仕事が経験できるやりがいのあるお仕事でした。これはたくさんのタイ人求職者に喜んでもらえると思いながら、タイ人コンサルタントに共有をしました。しかし、何日経っても、希望者が現れませんでした。タイ人コンサルタントに話を聞いてみると、「そんな大変そうな仕事、だれも希望しない」とのことで、人を探してすらいなかったようです。お客様は良かれと思い、様々な業務を経験できるように業務内容をご検討いただいたのですが、タイ人の方からは、大変だという認識を持たれてしまいました。私は大変だがやりがいのある仕事=良い仕事と考えていたのですが、タイ人求職者には単純に「大変な仕事」というように映ってしまったようです。タイ人コンサルタントと共有をする時に、キャリアップにつながるなど、もっと具体的に共有をするべきだったと反省します。

他にもタイならではの感覚ですが、「転職=給与up」というものがあります。これは未経験の業界に転職する時であったとしても、給与upすることが前提です。タイ人候補者の方に希望給与を聞くと、ほとんどの方が「前職の給与が○○バーツなので、5,000バーツアップさせたい」というような調子です。コンサルタントも前職より給与が下がるので、候補者に確認もせずに内定を辞退するというようなことも発生しているようです。低い給与なのに、提案をするのが失礼という感覚もあるようです。

常識の違いを理解し、社内環境を整えることが重要

日本人がタイで仕事をする上では、タイ人スタッフとの連携は必須となります。社内の意思疎通が取れていないのに、お客様に対して良いサービスができるでしょうか。無理やりなんとかしても一時的なもので、ストレスも大きいですし、どこかで立ち行かなくなるタイミングを迎えると思います。
私は1年間の経験で価値観の違いの重要性を強く感じさせられました。タイで働く日本人の役割としては、日系企業とタイ人スタッフの橋渡し・指導がほとんどですが、自分から歩み寄る努力をせず、橋渡しになることは不可能だと思います。「郷に入れば郷に従う」ということで重要と頭では理解していても、なかなか実践することは難しいです。職場で強いリーダーシップを発揮していきたいと思えば思うほど、自分の考えが正しいと思うようになり、タイの文化を理解することが難しくなります。

タイへの転職後、「こんなはずじゃなかった」とならないために

長々と自分の失敗談も交えお話してきましたが、経験のある職種であることのメリット・デメリットを考えるよりも、自分とは異なる考えに基づいた社員の行動に対してどのようにアプローチを取るかが大事です。面接担当者も業界の知識よりも「柔軟性」や「他の考え方に寛容かどうか」を見られていることが多いです。経験の有無はあまり大きなメリット・デメリットにはなりえないので、ご自身の経験業界にこだわって、チャンスを見逃さないでください

ABOUTこの記事をかいた人

多田 大樹

立命館大学を卒業後、人材紹介サービス業にて7年間携わる。人材紹介サービスの他、企業向けのコンサルティングサービスを提供。 アメリカに留学するレベルでASEANの政治経済が好き。多くの方に政治経済のおもしろさを知ってもらいたいと思い、身近なお話や、就職活動に役立つ記事を担当しています。 面接時に役に立つ雑学から、グローバル人材として必ず知っておいて欲しい情報をわかりやすくお伝えいたします!! でも、得意教科は理系です。