地域統合の比較 ASEANとEUはどう違うの?|タイ政治/経済


Posted on Oct 13, 2016



みなさん、こんにちは。タイでの就職を始め、多くの日本人の方がASEANでの就職活動に興味をお持ちかと思います。ASEANのイメージと言えば、経済成長著しい、常夏の国といったところでしょうか。ただ、それ以上にASEANの現状を見て頂きたいと思います。

本日は、ASEANと他の経済統合(地域統合)と比べてどのような立場にあるのかをデータで比較してみます。項目としては、人口・GDP・貿易総額について見ていきたいと思います。ASEANでの就職をご検討されている方は、世の中には様々な国と地域がある中でASEANを選ぶ理由をしっかりとご自身で理解して頂くことで、納得して働くことに繋がるのではないでしょうか。

そもそも経済統合(地域統合)とは


経済統合とは、自由貿易地域や関税同盟など、通商に関わる関税や貿易障壁、サービスの貿易に関する規制や、投資、人の移動のせいげんの撤廃などがなされることにより、双方 の市場経済を統合することを指す。(Wikipedia)

何やら、難しいことが書いてあります。国と国が貿易をする際には、関税が発生します。関税だけではなく、貿易に関係する資料が煩雑だったり、法律が違うことによる問題があります。つまり、関税を廃止したり法律の違いを話し合いをしながら、関税を少なくしたり、無駄・や手間になっていることをなくていくように決めていくということです。

関税を撤廃するか、関税率を低くしようという国同士の協定をFTA(自由貿易協定)と言います。その他、労働人口の共有や資格などの共有化など、より政治的なものもあります。貿易関連のお仕事に携わっている方でしたらご存知かと思いますが、国内で発送するのと国外に発送する上で必要になる書類も変わってきます。英語で書いてある資料が日本語で書かれているだけでも、楽になりますね。

比較する三つの経済統合


経済統合で最も日本人にも有名なものが、EU(欧州連合)ではないでしょうか。先日イギリスの脱退が正式に決まったことでも話題になりました。EUに関して説明は不要かと思いますが、28カ国が加盟する経済統合です。経済統合の他、通過の統合や域内の自由な移動なども可能となっています。一時期は、外交や安全保障・司法の統合も視野に入れて話が進められていたそうですが、現状はストップがかかっています。

続いて、ASEANと同じレベル大きな規模を持つものとしては、NAFTA(ナフタ;北米自由貿易協定)が挙げられます。NAFTAはカナダ・メキシコ・アメリカの3カ国によって調印されている協定で貿易と投資の自由化を目的として作られました。

最後にMercosur(メルコスール:南米南部共同市場)というものを挙げます。これはブラジル・アルゼンチン・ベネズエラ・ウルグアイ・パラグアイの5カ国からなる経済統合体です。メルコスールにはアンデス共同体(ボリビア・コロンビア・エクアドル・ペルー)を含めて南米諸国連合というものもありますが、未だ概念的なもののみで、経済統合に関して具体的な合意は得られていないので、メルコスールの数字を参考にしたいと思います。

早速ではありますが、まとめたグラフがありますので、下の表を見てください。今回は、世界銀行のデータを用い、一度各国別に数字を引用した後、足し合わせて作りました。だいたいの数字ではなく、各国それぞれが発表しているデータをもとのデータ作成をしていますので、かなり正確なものかと思います。
(http://www.worldbank.org)

人口を比較する


人口の多さで言うとASEANはトップで6.3億人です。EUは28カ国の連合ですが、5億人少しとなっています。日本の人口が1.2億人程度ですので、規模としては、それぞれ5倍と4倍となります。NAFTAはアメリカを中心に南北のメキシコ・カナダの3カ国だけですが、4.8億人とEUに匹敵する人口を含みます。Mercosurは3億人弱となります。













































加盟国数人口(千人)GDP(百万ドル)一人当たりのGDP(ドル)貿易総額(輸出+輸入,百万ドル)
ASEAN10カ国630,4912,442,4723,8743,071,686
NAFTA3カ国484,28820,641,86442,6237,212,695
EU28カ国509,66816,229,46431,84313,631,736
Mercosur5カ国292,4433,477,76311,8921,051,362

経済統合を比較する際、人口比較が大きな意味を持ちます。何故ならば、人口はマーケットの大きさを意味するからです。中国・インドなどの国が経済的に魅力だと言われる理由はここにあります。その他、成長が期待されている国々はBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)と言われ、加入するどの国も人口が1億人を超えています。人口が多ければ、みんな商品を買うので、儲かると言う単純なお話です。

域内の総人口を加盟国数で割ると、1カ国あたりの平均人口が算出されます。NAFTAの平均は1.6億人なのに対し、EUは1,800万人となります。経済統合の場合、人口の小さい国々が集まって大きな経済圏を作った場合、大きな経済的効果を得ることができます。その点、EUは他の経済統合と比較しても、経済的なインパクトは大きかったように思います。(政治的な深化と言う意味ももちろん大きいですが・・・)



































GDP(百万ドル)貿易総額(輸出+輸入,百万ドル)貿易総額,GDP比
ASEAN2,442,4723,071,686126%
NAFTA20,641,8647,212,69535%
EU16,229,46413,631,73684%
Mercosur3,477,7631,051,36230%

国内総生産(GDP)を比較する


GDPは国の経済規模を表します。この場合、加盟国の合計をしたものが、その経済統合体の経済規模となります。人口が多ければ、たくさんいるんだから、みんなたくさん買い物をしてくれる!!はずなのですが・・・

上の表を見てみると、域内人口の数とは比例していません。最も規模の大きなものはNAFTA、続いてEU、Mercosur、ASEANとなります。アメリカ1カ国でのGDPが大きすぎるのですが、カナダとメキシコを足しただけでもASEANと同等の規模となります。ASEANはどう贔屓目に見ても、世界的に見てみるとまだまだ小さい規模でしかないです。

また、一人当たりのGDPを算出したものがあります。(域内の合計GDP 域内の合計人口)
これを見ると、ASEANは他の経済統合と比べると桁が一つ足りません。これをどのように捉えるかが、重要だと思います。経済規模が大きくないで終わってしまえばそれまでですが、上で話した通り人口はあります。人口はその経済統合体のポテンシャルになるので、今後も成長の余地が大きいことを意味します。

貿易総額を比較する


GDPでを比較したところ散々な結果になってしまいましたが、一つ前向きな指標をご紹介・説明させていただきたいと思います。貿易総額を比較しました。これはただ単純に、加盟国の輸出総額と輸入総額を足し合わせたものです。決して域内での貿易総額ではありませんので、ご注意ください。

ご覧の通りですが、EUの約4分の1程度、NAFTAの3分の1の規模を持ちます。Mercosurと比較すると3倍と非常に貿易が盛んに行われています。GDPと貿易総額のGDPを比較したところ、ASEANのみが100%を超えました。色々と推測できる数字ではありますが、ASEAN諸国にとっては貿易の重要性が高く、地域統合は理にかなったアプローチであることが予測されます。

その反面、NAFTAやMercosurはGDPが大きい割には、貿易総額は大きくありません。つまり内需での経済規模が大きいことが予想されます。内需の場合、内需の経済成長が飽和してしまうとそこで行き詰ってしまいますが、逆に貿易の場合はマーケットが大きいので今後の成長力は見込めると思います。 同時にマーケットが大きい分、競合も数多くいることが想定されるので、一労働者としてはチャレンジングな環境に身を置かれることとなります。

ASEANで働くこと


今後、さらなる統合が進む中、タイが置かれている環境も大きく変わってきました。タイをベースに働くが、お客様はマレーシアやカンボジアなんてことが日常的に起こる日も近いかも知れませんね。

ある意味、タイで働くということは、周辺のASEABN諸国と無関係ではいられないということだと思います。つまり、タイで働くということは、ASEAN諸国と働くということに近いのではないでしょうか。タイ・ASEANのポテンシャルを理解していただき、タイで働くことでグローバルな雰囲気を感じ取ってもらえるチャンスだと思います。

次回はASEANの過去と行方について、調べます!

参考:
World Bank: http://www.worldbank.org
外務省アジア太洋州局地域政策課, 目で見るASEAN-ASEAN経済統計基本資料-(平成28年1月),http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000127169.pdf

Share to :

facebook twitter linkedin facebook copy

Leave a Comment: