ASEAN結成の経緯とAECの行方│タイ政治/経済


Posted on Nov 1, 2016



みなさん、こんにちは。今回も前回に引き続き、ASEANについて説明をします。 その中でもAEC(ASEAN Economic Comunity)の今後の目標について確認をしていきます。自分の将来、どこで生活をするのかを考える時にその国の将来を見据えることは重要です。タイに住まれるならば、今後はタイ一国だけはなく周辺の発展も見ていかなければなりません。ASEAN諸国との関係が、タイ経済の将来を決める重要な要因となります。

まずは前回の復習です。ASEANは共産主義に対抗することを契機として、東南アジアの政治的安定・経済成長を目的に設立されました。現在では6億人を有する10カ国から成っています。昨今では安全保障的な目的よりも経済統合体としての役割が大きく、日本の経済とも切っては切れない関係があります。2015年末にはAECが発足しました。AECは4つの柱があり、計画行程表が発表されています。まずは、このブループリント(青写真=計画行程表)から見ていきたいと思います。

 

AECのブループリント(行動計画)


2009年に発表されたブループリント(行動計画)から、AECのおおまかな概要がわかりますので、早速見ていきたいと思います。
asean

(出典:経済産業省,http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/east_asia/dl/MPAC.pdf)

AECの4つの柱は、1.ASEANの制度強化、2.ASEANの統合と競争力強化、3.ASEANの生活福祉の強化、4.開発格差の是正となります。これらを実行するための中心的な考え方が「接続と動員」となります。人の接続・物理的な接続(ハードインフラ)・制度上の接続(ソフトインフラ)・リソースの動員。つまりは、ヒト・モノ・サービスがASEANを一つの市場・生産拠点として機能することにあります。

ASEANにはヒトも資源も、技術的ノウハウも十分にあります。ただ、国境が邪魔をして効率良く機能していないという問題点があります。国境という障壁を取り払うことで国際的な競争力を向上させ、中国・日本・オーストラリアなどといった国に対し、充分な競争力を維持することをい目的としています。

ハードインフラとは港湾設備や高速道路を意味します。以前、メコン回廊について説明をさせて頂きましたが、道路事情を改善することにより効率の良い交通網を作ることが可能です。ハードインフラについては、陸地で繋がっているCLMVTの国々にとっては、最も重要な課題となります。ただ、改善された際には得られる恩恵が大きくなることも予想されます。これらのハードインフラの必要な開発費用などを各国で援助し合うということも、AECのブループリントにも組み込まれています。



ソフトインフラとは、貿易の自由化(関税の免除)や投資の自由化・優遇措置をさします。その他、課題ルールや貿易実務の統一などの行政レベルでの内容も含みます。ASEANは面白いことにほとんどの国がそれぞれ別の言葉を話します。ASEAN公用語も1ヶ国語だけではなく、全ての国の公用語がASEANでの公用語として定められています。非常にフラットな関係性であるASEANですが、これは貿易をする上では障害になってしまいます。この点、どのように解決していくのかは、まだ見えていません。

人と人の接続性に関しては、ビザなどの相互承認がわかりやすいと思います。ただ、それ以外にもそれぞれの国同士での相互理解・異文化理解を促進するための教育プログラムなどを指します。上記のような流れがあり、2020年に向けて具体的に動いていくこととなります。

 

AEC タイにはどのような影響があるの?


タイにとって、AECの発足は大きな影響があります。そのほとんどがタイにとってはプラスの影響だと言えます。

まず、何よりも大きな恩恵は「ヒト」にあります。タイの周りには、ミャンマー・カンボジア・ラオスがあります。経済的には少し出遅れている国々ですが、豊富な労働力があります。多くの方が出稼ぎにタイに来ますので、安い労働力を活用しながら生産活動をすることが可能です。実際に街中を歩いていても、ラオス人の方が建設現場で働いています。私はタイ語もラオス語もわかりませんが、言語的には近く、タイ語である程度の意思疎通ができるそうです。実は、タイという国ですが、国土は日本の1.4倍ありますが、人口は半分くらい(7,000万人弱)しかありません。ミャンマーの人口は6,500万人ですから、労働力といった点では追い風になることが想定されます。

次に考えられる大きな恩恵は陸続きであるという点から、大きなサプライチェーンを構築できることにあります。輸送の方法がシンプルであればあるほど、輸送コストは下がりますし、手続きも簡易になります。タイが力入れている産業の内、電子部品や加工食品くらいであれば陸路で運んでしまった方が安上がりで早く内陸都市に運ぶことが可能です。バンコクからビエンチャンくらいであれば、600km少ししかありませんので、東京-大阪間よりも短いですね。ただ、残念なことに、現在はスピードを出せるような高速道路もありませんので、1-2日くらいかかってしまうようです。その高速道路を改善できれば、スムーズな物流網を作ることができます。すでに建設用の機材に関する投資が増えており、早速AECの恩恵を受けている様です。

 

 

タイの将来性は?


地政学的にはタイは非常に恵まれた環境にあります。国境が直接面している国が、ミャンマー・ラオス・カンボジア・マレーシアと多く、統合の恩恵を受けやすいことにあります。また、マレー半島があるとは言え海洋へのアクセスも悪くなく、物流網としては豊富です。近代になってからも、西にイギリスの植民地・東にフランスの植民地があり、その2カ国の緩衝地帯として、占領されずに済んだ経緯もあり、東南アジアの中心に位置する国としての恩恵を上手く享受しています。

西にあるミャンマーも民主化されたこともあり、インドまでのアクセスも容易になると思います。(バングラディッシュをどうするかは、頭を悩ませそうですが・・・)また、東には中国もあります。生産能力は充分あるので、東西の消費圏までの物流網が揃えば、鬼に金棒となります。ただ、物流網が整うということは他の国々もアクセスが容易になるということですので、それぞれの国々で住み分けをしていく必要があります。

次回でAECの最終回となります。先日ASEANより発表された「ASEAN Economic Community 2015: Progress and Key Achievements」についてレポートさせていただきます。私もまだ読んでいませんので、来週どんな記事になるのか楽しみです。また来週!!

参考:
Association of Southeast Asian Nations: http://asean.org/asean-economic-community/
経済産業省:http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/east_asia/activity/asean.html
三菱UFJ投信:https://www.am.mufg.jp/text/20140925rinji.pdf
みずほ総合研究所:http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as141114.pdf

 

 

 

 


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