ASEAN設立の経緯と今後の見通し│タイ政治/経済


Posted on Nov 4, 2016



こんにちは、アデコの多田です。先日タイ国王であるプミポン国王が御崩御されました。タイ国民からとても愛されていらっしゃったので、大変残念です。追悼の意を表します。

前回はASEANやEUを始めとする経済(地域)統合について書かせていただきました。今回また次回のグローバルものさしでは、ASEANにフォーカスをしていきたいと思います。ASEAN設立の経緯から、今後の目標まで時系列で確認していきます。タイの今後の成長は、他のASEAN諸国の動向によって決まります。タイにとって理想的なパターンと悪いパターンを見ていき、タイの今後について考察していきます。まず今回のグローバルものさしでは、ASEANの成り立ちを理解しましょう。

「ASEAN」基本情報

 


  • 正式名称:東南アジア諸国連合(Association of South-East Asian Nations)

  • 本部:ジャカルタ(インドネシア)

  • 加盟国:10カ国(ブルネイ・カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・ミャンマー・フィリピン・シンガポール・タイ・ベトナム)


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各国のASEAN大使が本部に常駐している以外に、世界50カ国以上がASEAN大使をを任命し、ジャカルタに常駐しています。日本も日本政府代表部を設立、代表が常駐し政治・経済・文化に関する活動に勤しんでいます。

 

 

ASAからASEANへ(ASEAN設立前)


ASEANの前身はAssociation of Southeast Asia (ASA)と言われるものとなります。第2次世界大戦後に東南アジアの国々が新しく独立する過程で発生する領土紛争などの緊張を取り除くためにASAは組織されました。ある意味、日本もメンバーの一員である「6カ国協議」というような類のものです。

しかし、加盟国が3カ国と少なく、仲裁をしてくれるような国もなかったため、実質的には機能不全に陥っていました。状況が変わり始めたのは、冷戦がきっかけとなります。冷戦と言えば、アメリカとロシアの国家間における緊張関係を指しますが、冷たい戦いと書くようにこの2カ国は直接戦火を交えることはありませんでした。ご存知のように、朝鮮半島・ベトナム・中東などでの間接的に戦火を交えていました。(代理戦争)アメリカとロシアは、政治体制の違いを原因として仲が悪かったのです。アメリカは民主主義ですし、ロシアは共産主義です。20世紀は、共産主義が流行っていた時代でもあったのです。ロシア→中国→北朝鮮→ベトナムと順調にロシアを起点とし、共産主義国が南に広がって行きました。ドミノ倒しのように、共産主義は他国へ伝播することから、ドミノ理論というものが信じられ、東南アジアの国々も恐れていました。というのも、東南アジアの国々は独裁や君主主義(王様がいる政治)が多く、共産主義とは相性が良くなかったためです。

そこで、アメリカなどの強大な国のサポートもあり、加盟国を5カ国まで増やしASEAN設立となります。 1967年に、インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイの5カ国でASEAN設立を宣言する「バンコク宣言」が採択されました。

 

 

安全保障から経済的な統合へ (ASEANからAECへ)


このように、東南アジアの統合のスタートは経済的の統合ではなく、安全保障的な連合の必要性がきっかけにありました。その後、冷戦も終わり、世界にはある程度の平和が訪れました。1995年には社会主義国であるベトナムもASEANに加盟しています。これは、反共政治的同盟からの決別を意味しています。

1997年には、ミャンマー・ラオスの加入も認めています。当時、軍事政権であったミャンマーの加入に関しては、西欧諸国からの反対を押し切る形での加盟 となっています。ASEANに独自路線が見えるようになってきた時期もこの頃からとなります。

同時期の1997年には「ASEANビジョン2020」が採択され、2020年に向けて経済統合を図っていくと発表されます。域内での物品関税を可能な限りゼロにする方向で認識を合わせます。2007年には、ACE(ASEAN Economic Community; アセアン経済共同体)を創設する までの 具体的な工程表が決まりました。昨年、マレーシアにてACE発足の宣言が採択されました。

 

 

現在、ASEANへの加盟運動をしている国


すでに10カ国と国際的にも、日本にも大きな影響を与えているASEANですが、現在もパプアニューギニアと東ティモールが加盟運動中です。

パプアニューギニアは1975年の設立当初から関心を持っており、オブザーバーとしても会議に参加しています。しかし、パプアニューギニアは東南アジアではないので、ASEAN諸国は加入に対して否定的です。パプアニューギニアが加入することとなった場合、それはASEANが新たな局面を迎えることとなります。つまりは、東南アジアに限定しなくなるということなので、存在の意義が問われることとになります。パプアニューギニアの加入は、ASEANが新たな意義を見つけたということなので、非常に面白そうなことですね。当面の間は何もなさそうですが、引き続き関心を持っていきたいと思います。

上で書いたパプアニューギニアよりも、加盟が早そうな国が東ティモールです。インドネシアから独立したこともあり、インドネシアとは険悪な関係にあります。今まではミャンマーも東ティモールには否定的な立場でしたが、軍事政権の失脚とともに賛成の立場に転じました。治安の点では不安を覚えますが、経済成長も著しいようです。1-2年の間で加盟国が増えるかも知れませんね。

 

 

ACE(アセアン経済共同体)の今後の動向・目標は?


本題はここからなのですが、少し長くなってしまったので、次回にさせていただきたいと思います。個人的にですが、政治や歴史が好きなので、どうしても長々と書いてしまうようです。興味を持っていただける方が増えていただけると嬉しいです。

次回、ACEが進む先ということで、今後の予定と目標について見ていきたいと思います。では、また来週!!

 

 

 

 


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