TPPに代わるRCEPとは 超重要な3つの理由│タイ政治/経済
みなさん、こんにちは。
前回はTPPについて制度とASEANにおける位置づけを説明させていただきました。場合によっては、TPP発行によりASEANが分裂する可能性も考えられるという内容でした。
今回のブログでは、今後の日本の成長のためには、もしかするとTPPよりも重要かも知れないRCEPについて説明をしていきます。RCEPとは、日本ではASEAN+3と言った方が伝わりやすいかも知れませんが、RCEPはASEAN+3の他に
インド・オーストラリア・ニュージーランドの3カ国が含まれる点が異なってきます。
RCEPは
東アジア地域包括的経済提携(Regional Comprehensive Economic Partnership)の略で2011年にASEANが提唱したアイデアのことを指します。ASEANがFTAを個別に結んでいるインド・中国・韓国・日本・(オーストラリア/NZ)の5つのFTAをまとめたものです。

出典:経済産業省(http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/east_asia/activity/rcep.html)
ASEANとしては、現在バラバラに運用されているFTAのルールを一本化でき、より効率的な貿易ができるので、積極的に推し進めたい考えです。TPPの交渉が取りざたされている中、影が薄くなってしまっていますが、アメリカのTPP脱退の流れから、改めてスポットライトが当たっています。タイでは、TPPよりもRCEPに関連するビジネスの流れの方が強い気がします。
では、RCEPが重要な理由を
3つ説明させていただきます。
1. 急成長の国々が漏れなく加盟予定
ASEAN全体として、2015年のGDP成長率は5%を超えており、2030年まで4%を維持すると予測されています。(IMF) 日本の成長率が0.5%程度ということを考えると、驚異的な伸び率を記録しています。さらにインドの成長率は過去3年間で7%台を記録していますし、中国も未だに7%弱の成長率を毎年続けています。経済危機かと騒がれている韓国でさえも2%台を維持しています。
TPPの場合、成長率の高い国はASEANの中の加盟国に限定されます。日本とASEANはすでにFTAを締結していますから、あまり必要性は高くないと思われます。TPPは実質的にはアメリカとのFTA(貿易だけでなく、人の流れやサービスの質なども交渉されるので、ERP:経済連携協定(Economic Partnership Agreement))を締結することに近いです。他の国に関しては、ほとんどオマケといったレベルで考えてもらっても問題はないです。
事実、現在の日本の輸出の50%弱はRCEP加盟国向けの貿易となっています。日本のアメリカとの貿易比率は15%程度ですから、その点から見てもTPPと比べても必要性は明白ですね。
2. TPPより簡単に調印・発行できる
そもそもRCEPの経緯は、ASEANがすでに締結している5つのFTAを束ねてしまおうというものですから、すでに交渉のベースはできています。すでにある協定(内容としても大きな違いはない)を纏めるので、締結までもスムーズになることが想定されます。ただし、ASEANが中心なのでしっかりリーダーシップをとっていかないと船頭多くして座礁してしまう可能性もありますが・・・
ただ、TPPより簡単であることは明確です。TPPは貿易ルールを決めるだけでなく、人の流れや国内の法律に関しても協定を結ぶこととなっています。この際にベースとなったものは、アメリカとEUが締結した内容なので、TPP加盟国からしてみると、今まで馴染みのないルールをベースに交渉をしていくこととなるので難航します。国内法の調整もしていかないといけないので、実際の発行までも時間がかかります。
3.最も大きな経済統合になる(可能性を秘めている)
RCEPが発行されることとなると、最も大きな経済統合になります。まず、人口は他のどの経済統合よりも大規模になります。世界には約70億人の人口がいますが、RCEPだけで35億人を内包することとなります。
世界人口の50%を占める最大の経済統合となります。EUの規模が5億人であることを考えるといかにRCEPの規模が大きいかわかっていただけるかと思います。
GDPの総額でも、EUの17兆ドルを超えて約20兆ドルとなります。現在のEUの成長率は3%弱ですので、ASEAN・中国・インドの成長率の高さを鑑みると、まだまだ伸びる余地があります。
人口に関しても2030年までは伸びますし、インドの人口増加率は驚異的です。人口増加率の高いマーケットに対して、ビジネスを展開していける点は日本の成長戦略にとって必要不可欠となります。
タイではTPPよりRCEP?
簡単ではありますが、RCEPをまとめてみました。あまり日本では聞き慣れない言葉ではありますが、今後確実に重要になってくる言葉ですので、頭の片隅に記憶しておいていただきたいと思います。
仕事柄、タイのトップマネジメントの方とお話をさせていただく機会が多くあります。どの方も口を揃えて話されるのが、地域統合のお話です。中国・インドに対しての販売網に関する組織戦略や、タイ拠点をASEANの統括オフィスにすることでサプライチェーンの再構築をしているなど・・・
どの企業様も経済地域統合について考えられています。
トップマネジメントの方が考えていることがわかると、面接も有利に進めることができますので、大まかな流れだけでも理解をしておいていただけると便利だと思います。
では、また来週!!
参考文献:
経済産業省(http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/east_asia/activity/rcep.html)
外務省(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j-eacepia/)
外務省, 東アジア地域包括的経済協定(RCEP)交渉(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j-eacepia/pdfs/rcep.pdf)
財務省(http://www.mof.go.jp/index.htm)
JETRO(https://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/trade_01.html)
三菱総合研究所, ASEAN経済(http://www.mri.co.jp/news/press/uploadfiles/pr20160622pec04-3.pdf)