産業構成/人口比率から見るタイの生活基盤|タイ政治経済


Posted on Sep 29, 2016



みなさん、こんにちは。本日は前回の人口に引き続き、人口という切り口からタイを見てみようと思います。前回のグローバルものさし9回目「タイの人口動態ってどうなってるの?」はタイは今後高齢化社会を迎えるということを書かせていただきました。その変化に伴い、今後ニーズの出てくる産業も変化していくことが予想されます。日本とタイの産業構造の違いから、タイ人の生活の基盤や考え方などが見えてくると思います。

人口比率から見る産業構成


今回もいつもの例に倣い、世界銀行 World Bankのデータベースより参考になりそうなデータを見つけてきます。(http://wdi.worldbank.org/table

今回使用したデータは、World Development IndicatorにあるLabor Force Structure(人口構成)です。表にまとめたものが、下の表です。参考のため、日本の同じ時期のものを記載しております。2014年のタイと日本を比較して気づくことは、タイは日本と比べて第一次産業に従事している割合が多いです。その反面、日本はタイと比べて第3次産業に従事している人の割合が多いです。タイの男女比率を見ると、比較的割合が近いですが、日本の場合ですと女性の8割は第3次産業となっています。各産業に従事する男女比が比較的均等であることから、性別による選業はあまり多くはなさそうです。

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日本では、「この仕事は男性に向いている」や、「女性にしかつけない」という仕事が多い気がしますね。ここタイでは、性別に関しては寛容で、第3の性も公的に認められています。 タイでは子育ては女性の仕事という認識よりも、家族(親も含む)の仕事という認識があるため、女性の社会進出が進んでいることも、男女の区別を小さくしていると思います。

次にタイの1992年と2014年を見てみると、思っていたよりも変化が少ないことに気がつきます。タイはこの20年間でかなり急成長を遂げ、生活も豊かになったはずなので、第3次産業に移行していると想像していました。ですが、タイではバンコク・アユタヤやシラチャなどのエリアを除くと、今も昔と変わらず農業主体の産業構造となっています。そのためバンコクとそれ以外との格差が大きく、第3次産業への移行があまり進んでいないことが考えられます。

GDPから見る産業比率


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人口だけではなく、GDP比でタイの産業構成を見てみましょう。
人口比率と同じく世界銀行からデータを抽出しました。

この表から見て分かることは、14年前とあまり大きな差がないということ、むしろタイの場合第1次産業に依存する割合が高まり、第3次産業のGDP費が減少していることです。
アジア通貨危機の際に花開いたタイの製造業ですが、その後2000年以降は横ばいとなっております。タイバーツの価値が上がったことより、国際競争力で大きなメリットを享受できなくなったことに起因します。

2012年以降に関しては、政府による米の買取政策などにより、農業分野が優遇されたこともありGDP費で増えていることが想像されます。タイに比べ、日本は現在もサービスが拡充されており第3次産業が成長しています。

産業構造と政府の政策


タイの産業省によると、この2030年まで力入れていく成長業種は下記の通りだと発表している。

  • 第1次産業(農業)・・・米・ゴム・とうもろこし・果物・バイオエナジー・魚介類・家畜

  • 第2次産業(工業)・・・ゴム製品・食品加工・石油精製品・化学燃料・自動車・電子部品・産業機器・クリーンエネルギー・ヘルスケア商品・化学加工品・航空産業・広告

  • 第3次産業(サービス)・・・観光・小売・建築・輸送・医療


見て分かる通り、第2次産業から約半分の業種が選択されています。
政府としては、第3次産業よりも第2次産業に力を入れていきたいと考えているようです。

タイでは新規にサービスを提供を初める会社の数(第3時産業)は、過去最高レベルの多さとなっていますが、一つ一つのビジネス規模が大きくないこともあり、産業構成そのもが変化するレベルではありません。第3次産業は新規参入障壁が低いため新規参入も多いですが、その分競合も多く流行り廃りが激しい産業です。しかし、第2次産業の場合は、製造ラインを作る必要があることから初期投資が大きく、参入障壁が高いです。その分、長期的な戦略が立てやすく成長戦略を作りやすいことが想定されますタイ政府としては、長期的に成長できる産業として第2次産業を国の中心にしていくようです。

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