CLMV、タイを取り巻く政治経済基本編|タイ政治経済
6月中旬に「CLMVTフォーラム2016」がバンコクで行われました。ラジオでそのニュースを聞いていたのでのですが、現在のタイの状況が如実に現れていたので、今日は少し掘り下げたいと思います。タイを中心にASEANを取り巻く環境について分析していきます。
CLMVTフォーラム2016とは
ASEAN諸国の国々は、先発ASEAN諸国 と後発ASEAN諸国と分類がされており、加盟時期によって分類されます。下記の表は現在のASEAN諸国のASEAN加盟年度と、それぞれの年間GDP額と貿易輸出額を先発ASEAN諸国と後発ASEAN諸国に分けた表となります。

(資料)ADB Key Indicators 2013 (資料)IMF E-LibraryASEANの中でもCLMVTとは、後発ASEAN諸国+タイのそれぞれ頭文字をとった略称です。(メコン圏という言い方もあります。)ASEAN諸国の中でも中国に比較的近く、ユーラシア大陸に位置する国々です。
[C] Cambodia [L]Laos [M] Myanmar [V]Vietnam [T]Thailand今回のフォーラムでは、CLMVTの国々の閣僚・完了および民間企業幹部らをタイに招き域内関税障壁の撤廃とその手続きを始め、経済的強化・ネットワーク構築のための討論会を開きました。このフォーラムでタイの現プラユット首相は「ASEANの各国は、関税障壁を撤廃し自由貿易を推進させるだけでは充分な経済成長は達成できない。成長経済分業と程よい競争を維持し、国際的な競争力を保つことが重要」であると述べました。
タイは過去10年間安い労働力を武器に生産拠点としての経済を牽引してきましたが、タイを含む先発ASEAN諸国は人件費の高騰により、生産拠点としての魅力を失ってきたため、生産拠点を未だ人件費の比較的低い後発ASEANに移していくことを意味します。今回のこのようなフォーラムがタイ主導で行われるのは初めてですが、タイ政府としても人件費の高騰により国際競争力が減退していることを受け、 周辺諸国と緊密な連携を取り、経済成長を成し遂げていくという意思の表れとも言えます。
タイの成長戦略について メコン回廊
緊密な連携を築くとはどういうことでしょうか。タイの経済を語る上で、「メコン回廊」という言葉は重要単語です。メコン回廊とはバンコクを中心に北は中国の雲南(ウンナン)省へ、西はミャンマーのヤンゴン、南はカンボジアを通りベトナムのホーチミンまで、東へはラオスを通過しベトナムのダナン(港湾都市)まで続く全長2,300キロにも及ぶ幹線道路です。タイはCLMVのベトナムを除く3カ国と国境を面しており、経済協力をする上でかなり有利な場所にあります。(実際には、この幹線道路ですが、道路がいたるところで陥没してしまっており、上手く機能していないとも聞きますが・・・)
メコン地域/メコン回廊はどこを通っているか
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/01_hakusho/ODA2001/html/topics/tp00004.htm.メコン回廊が機能することによって考えられるメリットは、タイのバンコク・中国の雲南省・ベトナムのホーチミンのネットワークがつながることにより、投資の機会が増えたり、雇用の創出が期待される。また、同時にこのネットワーク上にある都市も相乗的に成長できる可能性が高いことにあります。海路より陸路での物資移動コストの方が一般的には高くなってしまうので、海岸部と内陸部での経済成長の発展具合のずれを防ぐことにもつながります。
また、道路ができても国境通過の際に手続きが煩雑になってしまっては、意味がないので、越境交通協定(CBTA: Cross Boarder Transport Agreement)と呼ばれる話し合いも進められており、近い将来CLMVTが一つの経済圏として機能することが見えてくるようになりました。
*単位:100万ドル (資料)調査部 環太平洋戦略研究センター, http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/2716.pdf最新のデータが見つけられなかったのですが、現在は上記の数字の3倍くらいの数字になっているようで、先月のCLMVTフォーラムでアピラディー商業相が出した数字は$25.307 billionなので、2007年から比べて3.18倍と大きく成長しています。
今後タイは、輸出拠点としての存続よりも、統括拠点としてASEANで力を発揮しようと考えているようですね。これは日本人がタイで働く時にも大きな変化が訪れています。最近、日本人を探されている企業様から、「統括拠点」や「ハブ」という単語を聞く機会が増えました。
タイだけでなく、ASEAN全体の動きだけでもなく、中国・韓国を含めてASEAN+3という枠組みでビジネスを考えられる方が求められるようになると思います。普段生活をしていると、どうしても目の前にことに一生懸命になりがちですが、世の中の動きにも関心を払っていただければと思います。次回は、CLMVTの枠組みの中で、タイはどういった産業が成長するのかを分析していきたいと思います。
JETROよりメコン回廊について動画(10分)があるので、写真や絵などがありわかりやすいので、興味のある方は見て下さい。実際の経済回廊の動画があるので、イメージが着きやすいです。https://www.jetro.go.jp/tv/internet/09/14f4308566f0c935.html
〈参考文献〉
環太平洋戦略研究センター『大メコン圏(GMS)開発プログラムとCLMVの発展』, http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/2716.pdf.
Asian Development Bank, Key Indicators for Asia and the Pacific 2015, http://www.adb.org/publications/key-indicators-asia-and-pacific-2015.
Bangkok Post, Phusadee Arunma S, CLMV export growth eyed, http://www.bangkokpost.com/business/news/1007289/clmv-export-growth-eyed.