タイはすごい勢いで経済成長している国なのか!?|タイ政治経済


Posted on Sep 29, 2016



こんにちは、アデコの多田です。最近タイは雨季に突入しました。雨季はスコールが多いですが、そのほとんどが夜中の間に振るんですね。翌朝には地面が濡れている程度で、むしろ気温が下がって気持ちが良いです。日中にスコールが来たとしても、30分ほどで止んでしまうので雨宿りをしていれば雨に濡れることも少ないです。私は2年間タイにいますが、傘を使ったのは1回だけなんです。

さて、みなさんはタイに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。微笑みの国や活気のある国というイメージですか?先日、明確な就業の目的を持って下さいという内容を記事の中でお話させて頂きましたが、そもそもタイについて掘り下げるという時間もないかと思います。しかし「日本より○○だ!」というように日本と比較するだけでは、タイ就職の意味づけとしては、不十分かもしれません。

本日は、世界の中でタイはどのような位置づけなのか、タイはどういう国なのかを俯瞰的に理解しグローバルスタンダードな“ものさし”を手に入れるべく記事を書かせて頂きます。主観的な理由だけでなく、客観的なデータを用いることによって、面接時にタイ就職の理由を聞かれた際も、採用担当者の認識とズレがなく説明できると思います。とは言えども、私も素人ですので、私の素朴な疑問を客観的なデータを見ながら検証をしていくという手法になります。間違っている点がありましたら、ご指摘頂けますと幸いです。

タイはすごい勢いで成長している国!!なのか!?


一般的に経済規模について比較する場合はGDPが用いられることが多いので、IMFが発表している数字を元に分析してみます。項目に関してはIMFのE-Libraryを参照しました。一部推定値も混ざってしまっていますが、IMFが公式に発表している数字なのである程度信用出来ると思います。表中のタイとASEAN5の経済規模の後ろにある括弧書きは、日本と比較したときの割合を指します。

GDP10
GDP11
*単位はUS Billion ドル
*ASEAN5はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムを指す。
*灰色の部分は、推定値
(出典:IMF, E-Library, http://www.imf.org/external/data.htm)

タイに来られる多くの方が「タイは経済の発展がすごいので、発展している国で経験を積みたい」とおっしゃいますが、実はタイの経済規模は、日本の経済規模の6%程度(2010年)から、9%まで成長してきたとは言え、ASEAN5ですら日本の半分に満たないのが現状です。


GDP8

GDP9
上に名目GDPの図がありましたが変化が見えづらいのでタイだけの表を作成しました。この表だけ単位がバーツになっております。これを見るとタイの経済成長は右肩上がりであることが分かります。成長率だけで言うと日本と比較しても大きな差は見られません。
タイの表で大きな乱高下が見られるのは2009年のリーマンショックの影響です。また一時7%台の成長率を2010年と2012年に記録しているのは年の暮れに起こった洪水が大きく影響したことが伺えます。この時の洪水では、被災したエリアの工場の稼働率が40%程度まで落ちるという経済的な大打撃を受けました。ちなみに、洪水が発生する前である第1四半期~第3四半期までは、約3%の成長を記録しているので、底力としては充分なポテンシャルを持っていたと言えます。

2013年ごろには、リーマンショック(2008年)と大洪水(2011年)という二度のショックを乗り越え、大幅に落ち込んだ輸出と投資はV字型回復を遂げました。とは言えども、高度成長と言えば10%を超える経済成長率を指すので、タイの経済がものすごく成長しているとは言いがたい現状があります。2013年10月から始まったデモ・クーデターの一連の政情不安もあり、2013年からの成長率は決して高くありません。2015年から順番に2.82%、2.98%、3.22%とのことですが、国内の政情によっては更に下回る可能性もあります。

現在のタイは残念ながらASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の平均と比べてもGDPが下回っています。タイの経済はASEANの中でも劣等生なのでしょうか・・・

なぜ、タイは成長しているの感じるのか!?


私はタイに来てからまだ2年しか経たないので、あまり実感をすることはないですが、長くタイにいらっしゃる方は口を揃えたように「タイはこの10年で非常に豊かになった」と言われます。では、実際にどうなのかIMFのデータベースを覗いてみることにしましょう。GDP5
*単位はUS ドル
GDP14

この10年間(2005年~2015年)での一人当たりのGDP(購買力平価の1人当りGDP額)を比較してみると、日本の成長は1.2倍、ASEAN5が1.7倍、そしてタイはなんと2.1倍とぶっちぎりの成長率を記録していることがわかります。

一人当たりのGDPとは、その名の通り簡単に言ってしまえば、GDP÷人口ということですから、生産性が上がっているということでしょう。実はタイは1990年代前半に毎年のようにGDP比40%が投資だった時期があり、大型の投資をする時期を完了しており、現在は生産性を上げるフェーズに入っています。そういった関係から、2000年代に入ってからは生産性が順調に上がり、一人当たりのGDPが順調に伸びたという背景があります。

リーマンショック以降、投資に関する比率は日本と同水準の20%台まで下がってしまいましたが、それでも尚一人当たりのGDPの成長率が高い水準を維持しているということは、まだまだポテンシャルを秘めているということだと思われます。

タイの経済的な位置づけ


タイの経済的な位置づけとしては、発展途上国と言うよりも準先進国と言ったところでしょうか。莫大な投資をする時期は既に完了し、より効率性や品質を向上していく段階です。この点、日本人が得意とする分野ですのですので、日系企業とタイのおかれている状況としての親和性は高いと思います。

アジア通貨危機、リーマンショック、洪水と予期しにくい状況はありましたが、それを乗り越える依然として高いポテンシャルを秘めた国という事実には変わりはなさそうです。ただ、単純に経済が右肩上がりかと言うと、月並みな言い方になってしまいますが、その点においてはタイ人とタイに関わる企業の頑張りに拠ると言ったところでしょうか。

東南アジアということで一括りにしてしまうと、タイの経済の現状を見失ってしまいます。今の現状を理解し、自分が望む環境をもう一度考えることと同時に、自分がどのように貢献出来るのかを考え直す必要があります。定性的な比較だけではなく定量的な比較の中から、タイ就職の意味を考えて頂くきっかけになれば幸いです。

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