アデコタイランドがブログ「タイ就職のいろは」で情報を発信する理由
こんにちはアデコタイランドの前田健太です。
突然ですが、ご存知でない方も多いかもしれませんので、改めてではございますが弊社についてお話をさせていただきます。
アデコはスイスに本社を置く、世界で一番大きな人材紹介会社です。そしてアデコタイランドは1989年に設立した、タイでも最大の人材紹介会社です。タイ国内では250名以上のスタッフでオペレーションされており、私が所属している“ジャパニーズディビジョン”は日本人が在籍した形で日本人に特化したサービスを提供しています。タイ国内にある10支店のうちの一つの支店で2003年に立ち上がりましたが、発足して以来去年までの12年間、アデコタイランドのジャパニーズディビジョンはこの様なブログを運営しておりませんでした。理由は簡単でブログを始めよう!という発起人がアデコタイランド内に今まで現れなかった為です。
それでは何故この度この様なブログを始めようと思ったのか。本記事ではこのブログを立ち上げるにいたったきっかけや経緯について言及をしたいと思います。
自己紹介
私の事は
以前アップしたインタビュー記事でも紹介をさせて頂いていますので、そちらも併せてご確認を頂けますと 非常に光栄なのですが、ブログをスタートするに至った経緯を説明する上で改めて自己紹介をさせていただきます。
私がアデコタイランドに入社したのは2012年7月のことです。入社後はシニアコンサルタントとして3年間、プレーヤーとしてコンサルタント業務に従事いたしました。コンサルティング内容は色々あったのですが、主にタイでお仕事をお探しの日本人の方、そしてタイで日本人を採用したいという企業様の対応を中心にお手伝いをさせていただく、 というミッションの元、がむしゃらに3年間走り続けてきました。ありがたい事に、2015年の終わりに正式に ディビジョンマネージャーとして、チームを任せられる立場となりました。当たり前ですがそれまでプレーヤーとしての経験のみ しかなかった私だったので、マネージャーへの昇格後は「マネージャーとは何ぞや」、 という事を身をもって体験することになります。マインドセットを変える過程で色々と葛藤や苦悩がありながらも、今はマネージャーとしての自覚を強く持ち、責任を持ってこれからも精進をしていきたいと考えています。
さて、そんな中、アデコタイランドのジャパニーズディビジョンとして、このブログを始めようと思った理由は二つありまして、ずばり以下の二つです。
- 情報を多くお届けしたい!
- 情報の精度・質を高めたい!
それぞれについて、以下にて説明をさせていただきます。
①情報を多くお届けしたい!!
まずは情報を多く皆様に届けたい、と思ったきっかけを について説明をする上で、以前私が担当をした新卒の方(ここではA君とさせていただきます)の話を少しさせていただきます。
A君は大学時代留学等を通して、タイ語英語ともにどちらも日常会話レベルまで習得された方でした。そして大学卒業と同時に、「そのままタイで就職をしたい」という思いから、 弊社に登録に来られました。タイに限ったことではないのですが、一般的に就業経験のない方が海外で就職する事は労働許可や、経験面、競争率の観点からハードルが高いと言わざるを得ません。ですが、見方を変えると 「可能性は0ではない」と捉えることもできるわけで、特にA君はタイ語英語ともに日常会話レベル以上で話せたため、ご本人のやる気次第では就職の可能性はある、 と考え、その時、は 私はA君に複数のお仕事を紹介させていただきました。しかしその数日後、A君から、 「タイでの就職は断念することにしました」という旨の電話がありました。理由はとある方(ここではBさんとさせていただきます)から「新卒でタイに就職をする事はリスクが高いため、日本でまずは就職をしなさい」、 と、厳しいアドバイスがあったため、との事 でした。私はご丁寧にご連絡を頂いたこと、にお礼を申し上げ、 日本での就職活動が成功をしますようにとお祈りを申し上げ、電話を切りました。その時、私の心の中では得もいえない複雑な感情が沸き上がっていました。
それを何故感じたのかを自分なりに掘り下げてみたところ、いくつかの理由が浮かび上がってきました。例えばタイで働きたい!という思いを抱いて来られたA君が厳しい発言によって意気消沈してしまう様を想像して 、自分に置き換えてしまい、エンパシーを感じてしまった、とか、単純に自分の好きな国でも あるタイに就職をしたいと希望していた人が諦めてしまったことによるさびしさであったり、とか。しかし自分の中で一番大きかった気付きが、
人が人に与えうる影響力の大きさでした。
発言をする事の重み
そもそもBさんを知らない私でしたので、Bさんがどの様な意図と経緯、どの様な言葉をA君に投げかけたのかは知る由もなく、 確認もしませんでした。しかし、A君の意思決定に大きな影響を与えたのだろうな、 という事は、A君と話をした際にひしひしと伝わってきました。つまりA君の人生にBさんが大きな影響を与えた可能性があるわけな のですが、その時に私が感じたことは、“発言をする”ということの重みでした。Bさんはどの程度A君を知っていたのだろうか。Bさんはどの程度タイの就職事情に精通していたのだろうか。Bさんはどの様な意図でA君にアドバイスをしていたのだろうか。そしてどれくらいの責任感を持った方で、どの程度覚悟を持った上でA君に話をしていたのだろうか。。。その様なことを色々と考えていたところ、いつしかその問いは自分自身へと矛先が変わっていました。
大げさに言うと、私の立場はタイで就職をする、 という人生で分岐点となりうる活動の 意思決定プロセスに関わらせていただく仕事であるわけ です。その為、「それを強く認識し、責任のある立場である、 ということを自覚し、仕事に取り組まないといけない」、そういう思いが私の中で沸き起こりました。もしかしたらA君の話はただの断り文句で、他に何か事情があったという可能性もあります。彼女がいたのに別れることになった、 とか、日本で就職先が決まったとか。A君に限った話ではないですが、全てを語ってくれる人ばかりではないです。しかし言い訳をし 始めればきりがないですし、私たちが責任感を持って仕事に取り組む、 というその 姿勢を緩めていい、という理由にはならない、そう自分に言い聞かせました。
しかし、その様な強い思いを抱いたものの、すぐに自分は壁にぶち当たることになります。それは、その責任をどうしても自分の満足のいくレベルで完遂できない、という葛藤でした。
コンサルタントとしての葛藤
私はこれまでコンサルタントとしてタイ就職を希望されている日本人の方と延べ 1000人以上、そして日本人を採用したいと考える日本人の方と延べ 150人以上と直接お話をさせていただいてきました。その中で毎回思うのが、実情を色々とお話させていただいたり、有意義な情報を提供するには圧倒的に“時間が足りなさ過ぎる”という感覚でした。なんだったらタイ就職や採用に関して食事を交えながら夜通し語らいたい、それ くらいの気持ちなのですが、残念ながら一人一人の候補者や採用担当者の方と持てる接触時間は限られていて、私が如何に工夫をして必要な情報を効率的にお話をさせていただいたところで 限界があり、そしてその限界と背中合わせの状態で仕事をして参りました。誤解が生じたり、情報がうまく伝達できなかったり等 、その過程で非常に歯がゆい思いも幾度となくしていきました。
何故そんなにも語らう必要があるのか。それはタイでの就職活動が日本と違って、情報が慢性的に不足している、 というのが大きな理由の一つだと思います。日本とはすばらしい国で、構成している方々の情報に関する感度の高さや、質を追求する国民性、またそれに人口の多さも相まって、日本国内のこととなりますと情報が非常に多い国です。情報に事欠かないどころか、むしろ情報が多すぎてどの情報を選定するか悩む、という非常に贅沢な現象が起きています。ですがこれが 一度、日本国外にステージが移った途端、情報量がいっきに少なくなる、ということが私がタイにきた当初感じた印象でした。これは今も根本的なところは変わっていないと思っており、もちろん情報の内容にもよりけりなのです が、「自国の情報:国外の情報」のような比率的なものがもし あったとすると、その比率に圧倒的な開きができる国として、日本はだいぶ トップランカーの方 に所属するのではないのかな、という感覚です。タイでの就職事情に関してはご多分に漏れずでして、だいぶブラックボックスな感が否めず、個人的なツテがない限り既存のインターネット上にあるリソースだけでは欲しい情報になかなかリーチできなかったり、そもそも不十分、 ということが実情かと思われます。ましてや タイ就職が初めての方ですと、タイでの就職についてだけではなく、タイで生活をする、 ということ自体についてもリサーチをしたい、 と思うのが心情かと思います。それすらも就職を検討・希望されている方の立場に立って提供されている情報は少ない、 というのが実情かと思われます。
圧倒的に情報が不足した環境の中で、現在日本人の方々は就職活動を強いられている!しかしその情報格差を埋めるためには、面談だけでは接触時間がどうしても短すぎる。その様な現状をどう打破すればいいのか、その様な葛藤をずっと抱いておりました。
コンサルタントとしての姿勢
その様な葛藤の中、コンサルタントとして意識していたことは求職者の意思を尊重すること、 でした。求職者の方を否定することもなければ、肩入れすることもしない。何故ならそれをする事には大きな責任を伴い、私はそれをするだけのコミットを十分にできているとは言い難い状況であった為です。私がやるべきことは、私の目からみたタイの実態を可能な限り伝えさせていただくこと、それだけでした。
先ほどA君の話をさせていただきました。聞く相手にもよるのかも知れませんが、“新卒でタイに就職をするよりも、日本で経験を積んでからタイで就職をした方がいい”という意見をA君のような方に投げかける方は多いように思います。私もこの意見はおおむね同意です。少なくとも現存の日本人求人は日本人的な対応ができる(言い換えると日本で営業経験や仕事の経験がある)人物を求めているケースが多く、またタイにおいては新人を教育するインフラが整っていない、 という観点からも上記の様な論調になるのは不思議ではありません。しかし上記の様な事実はあるものの、私はA君のような方にするべきことは否定することでも肯定することでもなく、ありったけの情報を与えた上で、 判断をしてもらう、ということだと思います。
現実を知ってもらう必要はあります。“実態を伝えない”、“不利な情報は隠す”、 という行為はあってはならないことだと思います。しかし同時に大志を抱いた若者の出鼻をくじくような、ある種否定的なトーンがある話し方もせず、大事なことは彼ら彼女らが抱く“思い”を尊重することだと 。
大事な事とは何か
親が無知な子を諭すように、より多くの情報や経験を持つ立場として方向性を指し示してあげる、 ということは使命であり義務であると捉え、時としてそれは おせっかいと思われながらも、人間はいにしえ よりそのアクティビティ に勤しんできました。しかし、もしそれをするようなことがある 場合、それなりの覚悟と責任感を持って、強くコミットしないといけない。私は深くそれをできる程のことができるのか。否、できない。それではどうすればいいのか。。。。 その葛藤の答えがこのブログでした。
経験が浅い分“過ち”を犯す可能性が高いからこそ、大人がしっかりと現実の厳しさを伝えてあげるべき 義務があるのだ!そういう意見もあるかもしれませんが、その“過ち”とは何を持って“過ち”になるのか。私は新卒でタイに就職をされた方を何人も見てきました。意外に思われるかもしれませんが、そういった方々の中で、タイで就職をしたことを後悔している、 とおっしゃられる方は今のところ一人も会ったことがないです。仮に“過ち”の定義を“後悔”という現象に した場合、今のところ“過ち”を犯している方は私が知りうる限りはいない、 ということになります。( もちろん私が会ったことがないだけで、上記の定義でいう“過ちを犯した人”は絶対数いるのは確かなのですが)また結果論ではありますが、就職ができた人がいる=そこにニーズがあるということで、上記の様な「新卒の方はタイで就職をするべきではない」という論調に対して反論を出そうと思えばいくらでも出てくると思います。
しかし“過ち”の定義に関わらず、自己評価でも他己評価であっても、この議論を建設的なものにする為には、例えば究極、 成功事例と失敗事例の数を比較する、 という話しになってしまい、私は新卒でタイ就職をした方々を生涯フォローして、死に際に(縁起でもないですが)“新卒でタイ就職をした”、 という選択肢がご自身の判断や周りの目から見てどうだったか、 というヒアリングを、有効サンプル数がどの程度がわかりませんが、 多くの方にしないといけないことになってしまい、収拾のつかない議論になってしまいます。比較的新しい技術であるレーシック手術の是非を問うのが難しいように。
ポイントはそこではなく、確固たる根拠を元に行動を取った、 という訳ではなかったとしても、理屈ではなく何かご本人の中で“タイ就職をしてみたい”という囁きが心の中で生まれた、 という事実、それ自体が注目をするべきポイントではないのでしょうか。
人材紹介会社としてできること
その様な思いを持った方々に、人材紹介会社としてできることは何か。それは圧倒的な情報を持って迎え入れること、 だと私は思います。それは甘い話だけをするという活動でもなく、「君のスペックではタイ就職を断念したほうがいい」という芽を摘む活動でもなく、ありったけの情報量をもってして ご本人に判断を仰ぐこと。
それでは“ 人材紹介会社のコンサルタント” の存在価値がないのでは!?というご意見もあるかもしれません。賛否両論あるかと思いますが、あえて誤解を恐れずに申しあげると、私が目指すべきだと思うことは、“コンサルタントとしてアドバイスをしない”ということではなく、いかにバイアスのかかっていないアドバイスができるのか、 ということです。それは感覚で言うと”ライオンが我が子を崖から落として試す“や、”魚は与えるのではなく釣り方を教えよ“といったメンタリティに近いのかもしれません。またコンサルタント、ひいては人材紹介会社も完璧ではない為 、何かを断ずる ということは責任を伴うことであり、アドバイスをしないことにより、 責任から逃れるという側面も0ではないかも知れませんが、それ以上に自身が完璧ではないということを自覚した上で、精進を し続けるという感覚を常に持ちながら、完璧ではないという事実そのものを認め、そこでカバーできないエリアを求職者の方々の感覚に任せる、 という感覚が近いと思います。
何故私がこう思うのか。これは恐らく私がグローバルな環境で生まれ育ち、またアデコタイランドに来ても直属の上司、支店長、社長ともにタイ人の女性という環境の中で、自然と実につけたグローバルで生き残る為の感覚から言っているのかも知れません。タイで就職し、力強く生きていただく為には、自分自身の事は自分自身で切り開く、というメンタリティで就職をして欲しい、だからこそ私も上記の様なメンタリティで接します。
ただ、やはりどれだけ厳しく日本でまず最初に就職をするべきだ!と言われても、「それでもタイで就職をしたい!」と思う方は反対を押し切ってでも就職をしますし、逆も然りで気持ちが浅いとどれだけラブコールを送っても響かない、最終的には気持ちの問題、 という見方もあるのですが、タイ人の彼女がいて、 その人と住みたい!という人に理屈も何もないですし、それを否定するのは野暮であるのと同じです。だからこそ、良くも悪くも私はニュートラルな立場でいるべきだと思うのです。
そして上記の様なスタンスだからこそ、
情報が大事なわけです!力強く生きていく、 ということはそれすなわち 自己責任である、 という認識を強く持つことであり、自己責任である、 という認識を強く持った方は必然的に情報が必要になる。その情報格差をできるだけ埋めるお手伝いをさせていただきたい。そう常々思いながら私は仕事に取り組んで参りました。
私がコンサルタントとして働いていた時には、その思いを実現させる対象が、自分が担当をする方、 という範囲に限定されていた為、ある種思考がストップしてしまっていたのですが、マネージャーという立場にたった今、よりマスに働きかけないといけない、 という圧倒的な思いが沸き上がってきていまして 、コンサルタントが個別で面談をした方のみに働きかけるだけでは私が理想とするレベルにまったく追いつかない、 という圧倒的な危機感が沸き起こってきたのです。
情報の精度・質を高めたい!!
そしてもう一つ大事な視点が、情報を公に出す、 ということでした。どうしても弊社内だけの考えでは、情報にバイアスがかかってしまったり、限られた範囲での情報に制限されてしまう恐れがあります。このご時勢での早い情報のアップデートのスピードに追いつくだけでなく情報の鮮度を保つためにも、ブログという皆様が簡単に目に触れることができるエリアに情報を置きたい、 と思ったわけで、ブログを始めようと思いました。
さて、 情報を多く伝えるにしてもその情報の質も担保されているべきでありますし 、そういった視点のもと、ニュートラルな発言であることが大事な訳になります。一番理想な状況は、掲示板で議論をし合えるような環境であると考えており、その形はどういったものであるのかについては今後も模索を続けたいと思います。その形を探っていくつもりです。 ブログはその活動のスタート地点としての位置付けにあります。その為色々なご意見をお聞かせいただけますと幸いです。メールアドレスは以下のとおりです。
Japan.th@adecco.comご精読ありがとうございました。