タイが周辺諸国と共存する方法を輸出品目から探ってみた│タイ政治経済


Posted on Sep 29, 2016



こんにちは、前回の記事「CLMV、タイを取り巻く政治経済 基本編」の中で 、ASEAN諸国の中にも先発ASEAN諸国と後発ASEAN諸国との分類があるというお話をさせていただきました。先発ASEAN諸国の一員であるタイでは人件費が高騰しており、労働力集約型の産業では国際的な競争力が維持できないという内容でしたが、タイは本当に競争力を失っているのでしょうか。タイの輸出品目など大まかな部分も確認をしながら、その変化の流れを追っていきたいと思います。

タイの輸出品目と各品目の国内での割合の推移を確認


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まず、そもそもですが、上位24品目の輸出額合計が、わずか10年間で2.8倍になっています。10年間で輸出額が約3倍まで増えているということは、生産ラインの増産されているでしょうし、国内では大きな変化があったことが予想されますね。ただ今回は、輸出額ではなく品目について考察をしていくので、大まかに品目を分類していきます。
黄色くハイライトされた部分が機械/電子系で、水色が化学関連です。24品目中11品目が機械/電子機械となり、5品目が化学関連となりました。自動車関連は10年間で8倍となり割合も3.4%から10%まで上昇しています。10年前とは様相が大きくかわっていますね。今まで、かなり多岐の品目に渡り輸出されていましたが、一定の業界に集約されてきた様子がわかります。機械/電子機器のイメージが強いタイですが、化学関連も強いということに個人的には驚きました。

業種別輸出の変容を確認


次に今回の本題である、業種別輸出の変容について確認をしていきたいと思います。

Picture3

こちらの表は、タイの2000年と2010年における輸出額ベースにおけるシェアの変容を示しています。一般機械・電気機械・パルプ・輸送機械・家庭用電気機器・精密機械の品目に関しては、ASEAN・世界輸出ベースのどちらで見ても、シェアを拡大していることを確認いただけるかと思います。ちなみに、ピックアップトラック・HDDの輸出に関しては世界で最大の規模となっております。HDD産業は2011年の洪水の際に大打撃を受けてしまったようですが…。
反対に食料品・繊維製品・雑貨・土製品に関しては、ASEAN輸出に占める割合でもシェアを下げていることがわかります。これらの産業は、労働集約型であることが多く人件費の高騰が国際競争力に大きく響きやすい産業です。ASEAN後発諸国が人件費の安さを武器に、労働力集約型の産業を中心に経済成長していることが原因と考えられます。先日のフォーラムでの発表があった通り、ASEAN先発国であるタイは周辺諸国と正面から勝負をするのではなく、産業別に各国で分業をしていくことになると思います。結果としても、そのようになっているように思います。
ただ、労働力集約型という点は、自動車業界にも見られますし、タイが強みにしている産業でも見られることです。つまり、上の表だけではタイの優位性は説明できないこととなります。次の章で詳しくお話します。
全ての産業において言えることですが、「組み立て」時において労働力は必要になることが多いです。日本でも部品は日本で作り、中国に輸出をした上で最終的に「組み立てる」ことが多いそうです。タイでも同じことが行われているようです。

タイの産業構造の変遷について


今回ポイントとなるのが、「生産段階別分類」というものです。この分類は大きく分けて二つあります。

  • 最終財...消費者が生活において使用する物資。つまり完成品を指します。

  • 中間財...生産過程において、他の最終財を生産するために使われる物を指します。


一般的に最終財は、「組み立て」の工程を有するため、労働力集約型になりやすい傾向があります。逆に中間財が多いと、「組み立て」の工程がないことを意味します。さっそく、タイの中間財輸出がASEANのシェアの中でどれくらいあるのかを確認していきましょう。

タイの中間財輸出がASEAN内での比率の推移(1980年~2010年)


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(資料)経済産業研究所「RIETI-TID 2011」から作成

タイが急発展を遂げていると言われている産業は、いずれも他のASEAN諸国と比較し中間財での割合の上昇が著しいことがわかります。
タイは、他のASEAN諸国よりも一早く最終財(組み立て)生産・輸出の産業構造から中間財輸出にシフトを切ることに成功しました。産業で分けるだけではなく、生産段階においても他のASEAN諸国と差別化をし、分業・共存を図っていくことがタイの政治経済のあり方のようです。今後もCLMVとの連携は強化していくようですし、タイにとって他の周辺諸国の成長は輸出相手国の成長につながるため、他人事ではないでしょう。今後もCLMV+Tからは目が離せませんね。

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