ASEANの在留日本人数からイメージするタイでの移住生活│タイ政治経済
こんにちは、仕事をしていると毎日たくさんの方とお話する機会があり、年間に実に400人以上の方とお話をさせていただいています。その際にはいろいろな方からタイへの移住を希望される理由を聞かせていただきますが、多くの方々が「住みやすい」ことを理由に挙げられます。
実際にバンコクには、多くの日本人がいて、様々な日本人コミュニティがあります。一例ですが、出身地や出身大学をベースとしたコミュニティはもちろん、餃子が好きな人が集まっているコミュニティや、出生年度を基準に集まっているものもあります。たくさんの日本人がいるということは、それだけ住みやすいということを意味しているのではないかと思い、在留日本人の人数を他の国々と比較してみようと思いました。もちろん、ビザの発給要件や国土の大きさなど、様々な要因があるので在留日本人人口の多さ=住み易さではではないですが、ASEAN諸国の国々での移住生活をイメージしてもらえるのではないかと思い、データを探してきました。
国外在留日本人数の国別推移を見てみる
本日利用するデータは、外務省「海外在留邦人数調査統計」2000年〜2015年の資料です。資料が年度別に別れているので、毎年度発表されているデータをひとまとめにして見やすくしてみました。この際の在留日本人の定義は「3ヶ月以上の滞在をしている(する予定の者を含む)在留届が提出されている」数となります。世界中を飛び回っている人や不法滞在している人、在留届を出していない人はこの人数から除外されているので、実際はもう少し多いかも知れません。
外務省のデータでは、130万人を超える日本人が、日本以外の異国の地で生活をしています。
在留邦人が最も多い国は、アメリカで40万人を超えます。その後は中国(13万人)、オーストラリア(8.9万人弱)、イギリス(6.7万人)、そしてタイが6万7,424人と続きます。イギリスとタイとの差は500人くらいですので、来年には逆転しているかもしれませんね。今回ASEAN諸国のデータに限り抽出いたしました。
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[aside type="normal"] 余談
フィリピンは英語習得のための留学先として選ばれることが多く、半年から1年で帰ってしまう人も多いため、実際に定住をしていると観点からは、実際よりも少なく感じるかも知れません。
先日、知り合いと 話 していた時に、ベトナムには日本人がほとんどいないという話になったのですが、実際に数字で見たところ、それほど少なくはないようですね。ただ、ハノイとホーチミンで提出されている在留届の数は、ほとんど50:50だったことより、感覚値としては、表の半分ぐらいのように感じるのかも知れません。[/aside]
ASEANの中での一番人気は37%を占めるタイです。続いての人気は20%でシンガポールとなります。先進国にかなり近い環境と英語が比較的通じることが、人気の理由だと思われます。この2カ国と大きな差はありますが、一定の人気があるのはマレーシア・インドネシア・フィリピン・ベトナムとなります。
円グラフを見て思いましたが、ASEANで生活されている方のちょうど3分の1の方がタイに住まれているということを見ると、改めて驚かされます。駐在員が選ぶ渡航先ランキングの上位に長くランキングされ続けるのもうなづけます。
さて、続いては在留日本人人口の伸び率についてです。タイは確かに在留日本人の数は多いですが、もう成長しきってしまった国と言われることもあります。下記のグラフは、上記に名前のあがっている国別の2000年の人口をベースにした人口伸び率を表しています。

伸び率で見ると、どの国も150%以上とASEANで生活をする邦人人口は大きな伸びを示しており、ASEAN全域で2.25倍となっています。ベトナムとタイの伸び率は3倍以上とASEANでの邦人人口の牽引役となっています。登録者の方々とお話を聞いていますと、タイ・ベトナムでの就業を希望される方が多く、マレーシア・インドネシアも視野に入れているという方が多くいらっしゃいます。
ベトナムやミャンマーなどでは社会主義的・独裁色が強かった国が、民主化されることにより、企業の市場拡大のチャンスが広がったためと見ることができます。また、中国の政情不安によるカントリーリスク増大を受け、「ネクストチャイナ」の流れの中で、人件費がまだあまり高くない国々が企業の新規進出先として選ばれることも理由のひとつだと考えられます。とは言えども、ベースとなる数字が小さければ倍率は大きくなってしまうので、その点はご注意ください。
邦人人口を理解することで何がわかるのか
一般的には、邦人人口が多いと日本人向けのサービスを受けられる可能性が大きくなります。また、同時に就業先という観点から見ても、日本人向けのサービスを提供するポジションも多くなりますので、就職できるチャンスも広がります。日本人が少ない=日系企業が少ない=日本人向けのポジションが少ないというイメージです。
タイでは、昔から日本と変わらないクオリティの日本食を食べることができますし、有料ですが日本の民放を見る事もできます。ベトナムについても、先日イオンモールの4号店がオープンしました。
海外就職に興味のある方にお伝えしたいこと は、就業先を選ぶ上で、まずその国に一度行かれることをおすすめしたい、ということです。街を歩くと、邦人人口の多さや増加具合を理解でき、その国が今どのような状態にあるのか、今後はどのような状態になるのかを想像できると思います。「邦人人口が多いので、日本人向けのサービスが多い」、「今は多くはないが増加の割合が多いので日本人向けサービスが今後増加する見込みがある」・・・・などです。
海外就職をする上では、長くその国とお付き合いをすることとなるので、5年後や10年後を想像することはとても大事なことだと思います。
[aside type="normal"] 余談
邦人人口を調べていた時に色々な統計を目にしたので、少しそれらについても書かせていただければと思います。
海外に在留する邦人の男女比:男性48%、女性52%駐在で海外に行かれている方のイメージは男性でした。私が仕事で会う方も男性のほうが多いイメージです。ただ、実際には男性のほうが少ないようです。海外で生活をされていらっしゃる方の比率ですので、仕事以外にも滞在する理由はありますから、イメージとズレがあることに関しては理解できるのですが、目から鱗が落ちる思いでした。
今後の推移も気になるので、人口動勢については引き続きウォッチングしていきたいと思います。 [/aside]