食事と国民性と食料自給率でASEAN比較 後編│タイ政治経済


Posted on Feb 2, 2017



皆さん、こんにちは。アデコの多田です。
前回は、気候や食事によって異なる国民性について少し書かせてもらいました。今回は前回に引き続き、東南アジアの台所事情を探っていきます。

世界でもトップクラスの食料自給率


「多い」とか「少ない」とか、感覚的なものにならないための「ものさし」が必要です。
早速、私の好きな、世界ランキングを調べてみました。エリアに拘らず、世界のTOP3とASEANの国々と日本のデータです。新しいデータが見つからず、10年近く前のデータではありますが、農林水産省のHPを参考にしました。

世界のTOP3は、オーストラリア、アルゼンチン、ガイアナです。
オーストラリアは何となくイメージがつくのですが、ガイアナって何でしょうか。(南アメリカ大陸の北部にある、小さな国だそうです)



私が住んでいるタイは6位に位置します。その他にもASEANの中で100%を超える国は、上位から順にミャンマー・ベトナム・ラオス・カンボジアと続きます。これらの国々は食に関しては、かなり裕福と思っていただいて間違いありません。以外にもマレーシアは日本よりも少ない26.6%で、ほとんどが輸入に頼っているようです。
マレーシアは地理的に開いた耕作地が少なく農産物の育成に適さないので、食料自給率があまり高くないことが理解できます。私がマレーシアを訪問した時は、雑木林がかなり多く輸出用の材木がいたるところで育てられていました。食用の作物を育てるよりも輸出用の作物を育てることを重視しているようでした。

ASEANのメインプレーヤーで言うと、マレーシア・シンガポールを除けば、かなり穀物の自給率が高いことが伺えます。逆にマレーシアの食料自給率は、致命的に低いと政府自体が認識をしており、現在、国をあげて改善しているようです。

 

食料自給率が低いとどうなってしまうのか


皆さん、気になるところだとは思いますが、現在も論争が繰り広げられており、決着はついていません。ただ、おそらく特に何もないということが結論のようです。
では、食料自給率が低い場合はどうすれば良いのか。答えは簡単で輸入をすればいいのです。食料の安全保障を考えるのであれば、輸入先を絞り込まずに分散化をし、リスク分散をすることが大切です。ただし、輸入をするためには外貨の獲得が必要なので、輸出用の製品を売る必要があります。そういった意味では、外貨獲得の手段がない国にとって、食料自給率は致命的な問題かも知れません。

例えば、マレーシアでは輸出用なオイル、木材、水産物などの輸出が盛んです。それらを海外の国に売り、外貨を稼ぎ、食料を買っています。逆にタイのように食料自給率が高い国では、余った食料を売り外貨を稼いでいます。ニワトリが先かタマゴが先かという関係なので、食料自給率の多い少ないだけでは判断は難しいです。

ちなみに余談ですが、タイは大量に余っている鶏肉をアメリカに譲ることと引き換えに、戦闘機を譲ってもらうように交渉をしていた過去があります。昔の話ではなく、ウィキリークスにリークされた内容では、F-16と最新機が交渉の対象とされていたようです。交渉成立まで間際だったのですが、2014年のクーデターにより交渉は流れてしまいました。仮に交渉が成立していれば、「飛べない鳥」と「飛べる鳥でないもの」を交換する結果となっていましたね。

 

 

日本との関連性について


日本とASEANの国々との食についてのお付き合いについてはいかがでしょうか。
日本の食料の貿易相手国として最も重要な国は、アメリカと中国です。これに続く国は、タイ・インドネシア・マレーシアのようです。農林水産省が発表しているデータでは、タイ・インドネシア・マレーシアの3カ国で日本の食料輸入の13%(2008年)をまかなっているようです。増加率は昨年比で20%近くとなっており、今後ますます影響は濃くなっていくでしょう。

逆に日本からは、耕運機など農産物を効率良く作るための機械がASEAN諸国向けに輸出されています。耕作に適した土地が少なく、高齢化が進んでいる日本は技術的な面でこれらの国々の生産に寄与しています。その結果、日本に食料が輸出されていることを考えると、興味深いですね。

 

 

ASEAN諸国の食料安全保障について


新聞を読んでいると、トランプ大統領のTPP白紙撤回の話が盛り上がっており、少しASEANのAECの存在感が薄くなってしまっている気もしますが、ASEAN各国の首脳に取っては、まだ発行されていないTPPよりも、実際に貿易額が大きくなっているAECの方がより現実的で、取り組まなければならないものです。ASEAN各国が食料安全保障を意識し始めたのは今から10年程前からです。各国それぞれ、食料自給率を上げるための方針を発表しています。変化が現れたのは、ここ2年間の中で、多くの国がAECの発足を意識して、各国で協力をしながら食料自給率を上げていくと発表しています。

まだまだ、私の住んでいるタイではタイ産の食品ばかりですが、今後はASEAN諸国のいろいろな食べ物を目にすることになると思います。
ASEANのスーパーマーケットに、いろいろな国の言葉や、特徴のある色使いがされているパッケージが並ぶことを想像すると、少しワクワクした気持ちになります。
では、また来週!!

 

 

 


 


「グローバルものさし」は、ASEAN就職を有利に進めていただくため、感覚的な説明ではなく、データなどの根拠をもとに、ASEANの本当の姿を見ていただくため執筆しています。

ASEANの成長戦略・経済・政治など、役に立つ情報を発信しています。
毎週 木曜日に更新しておりますので、是非、ご一読頂けますと幸いです。
このタイ政治経済の執筆者、日本人コンサルタントの多田の紹介はこちらから。

食事と国民性と食料自給率でASEAN比較 前編も併せてご覧下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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