【タイ】新憲法草案の是非を問う国民投票の争点とは?


Posted on Aug 25, 2016



みなさん、こんにちは。タイにいるとニュースなどを見る機会もめっきり減ってしまい時事ネタにすっかり疎くなってしまいました。タイの現状を知らないコンサルタントというのも恥ずかしいので、今日からしっかり「タイの今」についても追いかけていきたいと思います。さっそくですが、現在のタイを賑わせているのは「新憲法草案についての国民投票」です。

クーデター後もタイは平穏のままなので忘れてしまうこともあるのですが、タイは今、軍によって政治が行われている状況、つまり軍政ということですね。先日、2016年8月7日に、新憲法草案の賛否を問う国民投票が行われました。
マスメディアでは、賛成多数だったいうことで、軍政が承認をされたという記事をたくさん見ますが、あまり詳しく話されているものは多くありません。タイの昨今の政治を理解してもらえるよう、少し掘り下げて書いていきます。

新憲法草案の賛否を問う国民投票、新憲法の内容と投票結果は!?


今回の国民投票は簡単に言うと、現在司政している軍が作った新しい憲法草案について賛成か否かという国民の是非を問うものだそうです。争点になっている点は主に二つ!!

 


  1. 250名によって構成される上院議員(日本でいう参議院議員)を全て国家平和秩序委員会(つまり軍)が決める。

  2. 各政党が首相を選ぶが、相談でまとまらない場合は軍が首相を送り込む


  3.  


以下の内容は、日本の外務省の報道官談話から抜粋します。興味のある方は下記URLよりご覧ください。

 

 

新憲法の特徴
ア 首相が下院議員であるべきことが明記されておらず,実質的に非議員も就任が可能。
イ 施行後5年間,上院が官選議員(定数250)により構成。
ウ 非常事態の認定及び判断を,憲法裁判所長官が招集する合議体(国会議長,首相等)に委任。
エ 新政権発足まで,2014年のクーデターを主導した,国家平和秩序維持評議会(NCPO)が存続し,これまで同様の完全な権限を行使。

(参照元:http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_002230.html)


つまり、軍の関与がより強い政治システムに変えていくことを問うているようです。場合によっては、引き続き軍が選んだ首相のもと政治をしていくこともできるようです。軍の強いリーダーシップを今後も国民は期待しているのかどうかということなので、軍政が承認されるかどうか言い換えることもできますね。では、結果を見てみましょう。(参考:日本外務省)

投票率59.4%
新憲法草案の採択   : 賛成61.35% 反対38.65%
首相選任に上院も関与 : 賛成58.07% 反対41.93% [/aside]

多くの記事では、大勝といった記載になっていますが、結構、国民の中でも意見が割れているようです。

 

 

賛成・反対それぞれの意見


タイ人の友達に少しだけ話を聞いてみました。非常にセンシティブな話ですし、憲法について話し合うことが禁じられているので、深くは聞けていませんが、参考程度にご覧ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賛成


・新憲法草案が認められなければ、民政への移行もありえない。
・軍政になってからの方が、治安も良くなり賄賂も減ったから
・政治の混乱はこりごりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反対


・軍の権限が強い憲法になるのではないかと 考えている。
・軍による言論統制があったので、選挙自体が正当ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


それぞれ、いろいろと考えていることは様々あると思いますが、今回の国民投票の見方としては、二つの対抗軸があるように思います。それは、汚職撲滅vs民主主義の正当性です。

多くの友人は軍政は公務員・警察・政治家の汚職を撲滅してくれる と 期待しているようです。タイで少し前から問題になっていたことは、政治家による票買いです。つまり、賄賂ですね。「投票してくれたら、あなたの利益になることをしてあげますよ」くらいなら、どこの国でもありそうな話ですが、「投票してくれたら、お金をあげます」といった直接的なことも問題になったことがあるようです。

その反面、多くはありませんでしたが、軍政の正当性 という点で反対の一票を入れた人もいました。今回の新憲法草案についての議論や主張は認められていなかったためです。中には、議論が行われないままの投票だったので、新憲法草案の中身について知らないまま、投票に行った人もいたのではないでしょうか。
今回の国民投票では、タイの軍政の正当性よりも、現実的な問題である汚職撲滅の方が重要であると考えた国民が多かったようです。私自身が日常生活をしている限り、汚職に出会ったことはありません。しかし、汚職があったという話は良く耳にします。外国人として生活しているので、巻き込まれることがなく、実感としてはわかりにくいですが、タイ人にとっては、大問題のようです。

そもそも、私は選挙権を持ちませんし、新憲法草案の善し悪しについて述べる立場にはありませんので、私の考えていることについては控えさせていただきます。間違っている点などがあれば、ご教示いただけますと幸いです。

タイでは現在でも結構な頻度でクーデターが発生しています。クーデターは政治をより良くするための一種の方法として、定着しているようです。次回の「グローバルものさし」では、直近のクーデターや憲法の変遷を追いかけていきたいと思います。

 


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